人生を豊かにする「情質価値」とは?サッポロビールが2025年事業方針発表
サッポロビールは2025年1月15日(水)、渋谷区恵比寿の本社で2025年事業方針説明会を開催し、同社が目指す酒類ブランドカンパニーとしてのあり方や、2025年の事業戦略およびマーケティングアクションなどについて説明を行いました。
各ブランドのコンディションは過去最高に
「誰かの、いちばん星であれ」をビジョンに掲げるサッポロビール。同社代表取締役社長の野瀬裕之氏は、2026年には3回目の酒税改定を控えて狭義のビール市場が改めて注目されているなか、2024年のビール事業は大きな成果を挙げ、「現在は各ビールブランドのコンディショが過去最高になりつつある」と語りました。
今年はさらにその上を目指してビール魅力化の取り組みを加速させていきたいとのこと。札幌、恵比寿、銀座と、日本の地名を名乗るブランドや社名はサッポロビールの個性でもあり、「ていねいなものづくりはもちろん、味覚表現だけでない個性や物語を発信し続けていきたい」としています。
黒ラベルは「異次元」の成長を実現
2024年はビール・RTDとも狙い通りの成果が出せた実り多い年だったと語るのは、続いて登壇した常務執行役員 マーケティング本部 本部長の武内亮人氏。ビールについては長年追求してきた個性と物語を強みとするマーケティングが功を奏して主要ブランドが軒並み成長。特に「サッポロ生ビール黒ラベル(以下、黒ラベル)」は全容器で前年比109%、缶は同117%と、「ビール市場全体と比較しても異次元の成長」(武内氏)を遂げたほか、「ヱビス」「サッポロクラシック(以下、クラシック)」「サッポロラガービール(以下、ラガービール)」も大きく伸長。さらにRTDも「濃いめのレモンサワー」「男梅サワー」といった主要ブランドが牽引し、4年連続過去最高売上で市場を上回る成長を記録したとのことです。
2025年については、市場全体では狭義のビールとRTDが伸長する一方で発泡酒②(旧新ジャンル)は縮小を予想。環境要件も考慮するとビール類が前年比95%程度、狭義のビールが前年並み、RTDが同101%程度の推移になると見ています。そのなかで同社は、ビール類全体で前年比98%、狭義のビールは同104%、RTD同108%と、ビール・RTDとも市場を上回る成長を計画しているとしています。
4,850万人のビール無関心層をカイタク
同社の中期ビール事業方針としては、日本のビール魅力化の牽引役になることを目指し、ブランドの「個性」「物語」「(顧客や社会とともに築いてきた)資産」を強みに変えるマーケティング投資を実践していくとのこと。そのうえで、ビールの量的成長には次世代ビールユーザーの拡大が必要という同社が注目する生活者は、「好きでも嫌いでもなく、特段の理由なくビールを飲んでいない」、または「特に銘柄にこだわりなくなんとなくビールを飲んでいる」という「ビールの無関心層」としています。
国内でお酒を嗜むおよそ7,500万人のなかで4,850万人前後と見ている「ビール無関心層」に対し、まだまだコミュニケーションできるというサッポロビール。「総人口や飲酒人口の減少は不可逆的だが、市場をお客様の関心層と無関心層という切り口で見ると、マーケティング次第ではまだまだ国内にも可能性があると信じている」と、武内氏は語りました。
「情質価値」創造の10年でビール缶は1.5倍に
他方、消費者のとっての環境変化を考えてみると、情報デバイス等の進化が生活を便利にしている一方で、偶然性や未知なるものとの出会い、あるいはリアル体験への欲求が高まりを見せているとのこと。また、情報が溢れている世の中で、購買行動については吟味以前の直感的なトライアルや体験がブランドとの接点の入口になるのではないかと考えているとしています。
そこで今後は「私たちからの一方的な情報伝達でなく、積極的な体験によって、お客様にサッポロ独自の豊かさを感じていただく視点が大事になる」と語る武内氏。そこで嗜好品としてビールの魅力を高めるために創造したい価値を、サッポロビールは「情質価値」と定義しているとのこと。ひとりひとりの人生を豊かなものにする存在にまでビールの価値を引き上げることが、嗜好品としてのビールの魅力化。その意味で、同社の造語である「情質価値」とは、感情の質を高め、人生を豊かにすることの価値としており、今後はブランドごとに異なるテーマやコンセプトを持った情質価値を捉えながらマーケティングを行い、顧客との関係をつくっていきたいとしています。
情質価値を創造するマーケティングを実践してきたこの10年、ビールブランドでは大きな新商品を発売していないサッポロビールですが、新商品の瞬間的な販売に頼らず既存ブランドで着実に成長してきたとのこと。ビール缶の成長は約1.5倍、黒ラベル缶にいたっては同約2倍と、市場の同1.16倍と比較して「異次元の成長」(武内氏)を達成しており、今後は「情質価値」創造のマーケティングをさらに先鋭化させ、広告と体験という2つのアクションを通じて同社ならではのテーマを鮮明に表現していきたいとしています。
体験を通じて顧客の飲用量は変化する
広告ではモノの紹介でなくブランドの姿勢を表現し、独自の個性と物語を顧客価値に変換。黒ラベルの「丸くなるな、★になれ。」、ヱビスの「たのしんでるから、世界は変えられる。」といったコピーのように、顧客自身に解釈やブランドの選択理由を積極的に考えてもらえるような「余白」あるメッセージで共鳴や共創を生んでいきたいとしています。また、体験も重要なブランド接点の入口。YEBISU BREWERY TOKYO来場者の6割は20~30代とのことで、次世代のビールユーザー創造には体験が重要になるとしています。
今後は、そうした体験のための“場”も積極的につくり出していくとのこと。たとえば、これまで「サッポロ生ビール黒ラベル THE BAR」に来場したライトファンの飲用量は体験後に144%まで伸長しているなど、独自の“場”において、テーマ性ある体験をした顧客の飲用量は大きく変化しているそう。このほか、同社はオンライン上の体験についても新しいマーケティングに取り組み、「お酒の楽しさや未来を分かち合う“場”をつくっていく」(武内氏)なかでテストマーケティングや価値探索を行うほか、顧客とともに新しいコトを共創する場として、4月頃に「シュパーク」というWebサイトをオープン予定としています。
2025年に200万人規模の新規顧客拡大目指す
マーケティングアクションについては、新しい顧客との出会いに強くこだわり、2025年に200万人規模の新規顧客拡大を目指すとのこと。黒ラベルのマーケティングアクションのテーマは「憧れと共感」としており、「自分らしく生きる喜び。」という情質価値を感じてもらうべく、ブランド体験イベントでは「黒ラベル EXPERIENCE 2025」を黒ラベル史上最大規模で展開。「THE PERFECT 黒ラベル WAGON」を全国11箇所で開催するほか、「サッポロ生ビール黒ラベル THE BAR」も開業6年目にして初のリニューアルを予定。ファンコミュニティの情報サイトと連動した新しいスペースも新設するなどして、さらに熱狂度を高めるフラッグシップを目指すとしています。
一方、2024年にYEBISU BREWERY TOKYOをオープンして「プレミアムビールとして新しいステージに入ったと自負している」というヱビスのマーケティングアクションテーマは「共鳴と共創」。情質価値「心を満たし前に進む意欲」を感じられるブランドをつくりあげるべく、4月にはYEBISU BREWERY TOKYOの1周年記念イベントを開催するほか、ヱビスの世界観や姿勢に共鳴する各業界の方々との共創にも取り組むとしています。2月には漫画家・アーティストの荒木飛呂彦氏とコラボし、明治時代から展開していたというヱビスの美人画ポスターを現代的にアップデートしたオリジナルデザイン缶を発売するほか、展示イベントなども予定。また、スコッチブランド「デュワーズ」とのコラボも企画しているほか、新進気鋭の飲食店をブランドパートナーに迎え、飲食店における体験価値高める取り組みも行うとのことで、こちらは夏頃に恵比寿エリアからスタートするとしています。
RTDも個性×物語×資産でマーケティング
他のブランドについても、2024年は「ラガービール」が前年比121%と、瓶容器ブランドとして異次元の成長を遂げたほか、クラシックも2024年に過去最高売上を記録、「SORACHI 1984」も取扱店が前年比115%に増えて存在感を高めたとしています。特にクラシックは2025年に発売40周年。北海道の人々への感謝を込めた企画も含めてマーケティング投資を強化し、さらなる成長を実現させたいとしています。
加えて、同社はRTDでも顧客とつくってきた歴史を活かし、「個性」「物語」「資産」を強みとするマーケティングを展開して新規顧客の創造に取り組むとのこと。2月には、これまで40年以上にわたって飲食店で愛されてきたというサワー「氷彩(ひょうさい)」ブランドを、RTDおよびRTSで発売予定としています。
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